CMAS(クマス)世界水中連盟の役割と国際ライセンス制度を分かりやすく解説

CMAS_diver_thumbnail ダイビングの知識

CMAS(世界水中連盟)は、ダイビングを中心とした水中活動における国際的な権威として広く知られています。

本記事では、そんなCMASの全体像からライセンス制度、競技活動、環境保全の取り組みまでを徹底解説します。世界各国で活動を展開するCMASは、その認証制度や教育カリキュラムの厳格さと信頼性において高い評価を受けています。

この記事を読むことで、以下のような疑問や興味にしっかりと答えることができます:

  • CMASはどんな組織? 他の団体と何が違うの?
  • どのようなライセンス制度があるのか?
  • 水中競技やイベントにはどんな種類があるのか?
  • 日本国内ではどういう活動をしているのか?
  • 海洋保護やサステナブルな取り組みは?

このように、CMASは単なるライセンス発行団体ではなく、世界中の水中活動の標準を築いてきた存在です。これからダイビングを学びたい方はもちろん、すでに経験者でより高いステージを目指す方にも、本記事は非常に有益な情報源となるでしょう。

CMASとは何か?その歴史と役割

CMAS(Confédération Mondiale des Activités Subaquatiques/世界水中連盟)は、1959年に設立された水中活動の国際的なNGOであり、ダイビングや水中競技、科学調査、環境保全などにおいて世界的な標準を構築してきた重要な組織です。本部はイタリア・ローマにあり、世界130か国以上の加盟団体と連携して国際的な活動を展開しています。

レジャーとしてのスキューバダイビングだけでなく、水中ラグビー、水中ホッケー、フリーダイビング、フィンスイミングなど、多様な水中スポーツを支援・統括していることでも注目を集めています。また、環境保護や教育的取り組みにも力を入れており、単なるスポーツ団体ではなく、グローバルな視点を持つ水中文化の拡張者とも言える存在です。

設立の背景と目的

1950年代、世界的な水中活動の拡大に伴い、安全基準や教育制度の国際的統一が求められました。これに応える形でCMASが誕生し、以来、「水中活動の質と安全性の確保」を最大の使命としてきました。設立に関わったのはジャック=イヴ・クストーをはじめとする当時の海洋探検家たちであり、科学とスポーツの融合を理念に掲げていました。

CMASの組織構成と本部

CMASの本部はイタリア・ローマに置かれ、会長を中心とする執行委員会、スポーツ委員会、科学委員会、教育委員会などにより構成されています。各国からの加盟団体が参加し、定期的な国際会議や総会によって運営の方針が決定されています。以下の表は主な組織構成をまとめたものです。

部門 役割
スポーツ委員会 国際競技の統括・ルール設定
科学委員会 海洋研究・調査活動
教育委員会 ライセンス制度と教材開発

水中活動における国際的な影響力

CMASの発行する資格は世界的に通用し、各国のダイビング団体やリゾート施設でも高い信頼を受けています。また、国際大会を開催・公認することで、水中競技の普及とスポーツ文化の発展に貢献。ユネスコとも協働し、教育や文化事業にも関わるなど、まさに“水中の国際連盟”と呼べる存在です。

他の国際水中機関との違い

CMASと並ぶ国際的なダイビング団体にはPADI、NAUI、SSIなどがありますが、これらは営利目的の民間企業であるのに対し、CMASは非営利かつNGOとして運営されています。そのため、公的信頼性が高く、国際機関や政府レベルでの活動にも強みを発揮しています。また、競技ダイビングという分野を積極的に推進しているのもCMAS独自の特徴です。

CMASのロゴとその意味

CMASのロゴはトリトン(ギリシャ神話に登場する海の神)をモチーフにしたデザインで、水中世界と神秘性、そして人類の探究心を象徴しています。青を基調とした色使いは、海の静寂さと深さを表現しており、視覚的にもCMASの理念を体現しています。

CMASが提供する主要なライセンスとは

CMASはその設立当初から、一貫して教育と安全性を重視したライセンス制度を構築してきました。一般的なレジャーダイビングからプロフェッショナルインストラクターまで、多層的な認証システムを持ち、世界中のダイビング教育機関と互換性を確保しています。

以下では、代表的なCMASライセンスの種類や取得条件、他団体との違いなどを詳しく見ていきましょう。

CMASダイビングライセンスの種類

CMASライセンスは以下のように構成されており、レベルごとに明確な定義と技術要件が設定されています。

  • 1 Star Diver(初級):水深20mまで、インストラクターの監督下
  • 2 Star Diver(中級):水深30mまで、バディダイブが可能
  • 3 Star Diver(上級):高度な自己管理能力を備えた独立ダイバー
  • Instructor(インストラクター):他者への指導・評価が可能

各ライセンスの取得条件と内容

1 Starでは基本的な潜水技術と器材管理、2 Starではナビゲーション・緊急対処、3 Starでは減圧潜水や複数ダイバーのマネジメント能力が求められます。インストラクターになるには、教育学習理論やプレゼン技術も必要となり、非常に高い水準が設定されています。

他団体ライセンスとの互換性

CMASはISO規格に準拠しているため、PADIやSSIなどの団体とのライセンス互換も可能です。ただし、完全な一致ではなく、国や団体ごとに一部条件が異なる場合があるため、事前に確認することが重要です。

互換性の例としては、PADIのAdvanced Open Water Diverが、CMASの2 Star相当とされるケースが多く、海外でのダイビング時に役立つ場面が多数あります。

CMASが主催・公認する競技とイベント

CMASは単なるレジャーダイビングの教育団体にとどまらず、水中競技の普及・促進にも大きな役割を担っています。競技スポーツとしての水中活動は、参加者の技術向上や健康促進だけでなく、海洋文化の継承や若年層への啓発という側面でも重要な意味を持っています。

ここでは、CMASが支援する競技の種類や主要大会、競技とレジャーの違いについて解説します。

水中スポーツ競技の種類

CMASが支援・公認する水中スポーツは非常に多岐にわたります。以下の競技が代表的です:

  • フィンスイミング:水中フィンを用いた高速スイミング競技
  • アプネア(フリーダイビング):無呼吸での深度や距離を競う競技
  • 水中ホッケー:プールの底でパックをスティックで打ち合うチーム競技
  • 水中ラグビー:水中3D空間でのボール奪取型スポーツ
  • オリエンテーリング:コンパスとマップを用いた水中ナビゲーション競技

これらの競技はヨーロッパを中心に大会が活発に行われており、アジアやアフリカ地域でも近年普及の兆しがあります。

代表的な国際大会とその実績

CMASは定期的に「CMAS World Championships」や「World Games」といった国際大会を主催しており、各国のナショナルチームが参加します。これらの大会では技術力・戦術力・精神力が求められ、水中版オリンピックとも称されるほどの格式を持っています。

特にフィンスイミングは競技人口も多く、スピード感と戦略性の高さから人気があり、世界記録も頻繁に更新されています。

競技ダイビングとレクリエーションの違い

競技ダイビングは明確なルールと審査基準があり、トレーニングも科学的に体系化されています。一方、レクリエーションダイビングは体験重視で、自由度の高さが魅力です。CMASは両者をバランス良く育成し、どちらも安全かつ高品質な教育を提供することに注力しています。

CMASと日本国内の関係と活動

日本においてCMASは、それほど広く知られているわけではありませんが、特定のプロフェッショナル層や教育機関、研究機関などで高く評価されている国際組織です。近年では、環境保護や国際資格取得の需要の高まりとともに、日本国内でもその存在感を増しつつあります。

日本のCMAS加盟団体

日本国内におけるCMAS加盟団体としては「日本水中活動連盟(JUSAC)」が代表的です。JUSACはCMASの正規代理として、日本でのライセンス発行、教育実施、競技支援などを行っています。その他にも、大学のダイビングサークルやプロフェッショナル教育機関と連携しており、全国的な活動を展開しています。

国内ライセンス発行と講習機関

CMASのライセンスは国内でも取得可能で、JUSAC認定のダイビングスクールやトレーニングセンターで講習が実施されています。ライセンスの内容は世界標準に基づいているため、海外でのダイビングにも対応可能です。

また、プロフェッショナルレベルの教育を提供する講習機関では、国際的な資格を活かしたキャリアパスも提供しており、ダイビング業界に進む若者にとって大きな魅力となっています。

日本国内でのCMAS認知度と評価

CMASはPADIやNAUIと比較すると一般認知度はやや低いものの、学術的・公的な信頼性の高さや、教育品質の安定性から、大学・研究機関・政府関連プロジェクトで重宝されています。特に環境教育や科学調査においては、CMASの体系的アプローチが評価される傾向にあります。

CMASのトレーニングと教育システム

CMASが世界的に高く評価されている理由のひとつが、厳格かつ論理的に構成された教育システムです。単にダイビングの技術を教えるだけでなく、海洋科学、事故対策、安全哲学などを含む総合教育が特徴です。ここでは、その教育体系の全容とレベル別の内容、さらにインストラクター教育について詳しく解説します。

トレーニングの基本構成

CMASの教育カリキュラムは3段階(1 Star〜3 Star)+プロフェッショナル資格に分かれており、段階的にスキルと知識を習得できるよう設計されています。以下はその基本構成です。

ランク 技術レベル 対象
1 Star 基礎技能・水深20m以内 初心者・レジャーダイバー
2 Star 中級技能・水深30m・自立 経験者・セルフダイビング可
3 Star 減圧・ナビゲーション・レスキュー 上級者・グループリーダー
Instructor 教育・評価・指導スキル インストラクター志望者

インストラクター資格と教育レベル

CMASのインストラクター資格は、世界的にも最も厳格な認証制度の一つとされており、実技・筆記・口述試験の全てに合格する必要があります。教育心理学、安全管理、リスクアセスメントなど幅広い知識が求められ、取得者には高度な専門性と倫理観が期待されます。

また、インストラクター育成は単発的な講習ではなく、継続的なトレーニングと再認証制度により、常に最新の知識と技術を保つことが義務付けられています。

教育カリキュラムの国際的標準化

CMASはISO(国際標準化機構)の認証を取得しており、その教育内容は国際的にも統一された基準で運用されています。これにより、どの国のCMAS講習を受けても同等の品質が保証され、グローバルに活動するダイバーの信頼を集めています。

この国際標準化は、観光ダイビング産業にも大きな恩恵をもたらし、世界中のダイブショップでCMASの資格が通用する背景となっています。

CMASの環境保護活動と国際的取り組み

CMASの使命の一つに「海洋環境の保全」があります。単なる教育機関にとどまらず、国際的なNGOとして、さまざまな保護活動やサステナブルな取り組みを推進しており、水中世界を次世代へと引き継ぐための努力を続けています。

海洋保全プロジェクトの事例

CMASは「Blue Diving」キャンペーンをはじめ、世界中で海洋生態系の保全を目的としたプロジェクトを展開しています。海底ゴミ回収、サンゴ礁の再生支援、絶滅危惧種の調査活動など、具体的で継続的な取り組みを実施しています。

こうした活動にはダイビングライセンス保持者もボランティアとして参加でき、教育と実践を融合させた仕組みとなっています。

加盟国との協働活動

CMASは各国の加盟団体と連携し、環境保護や災害救援、科学調査に取り組んでいます。たとえば、東南アジアの沿岸地域では海洋ゴミ問題に取り組むプロジェクトが行われ、欧州では水中文化遺産の保全活動が進められています。

各国で共通するのは、教育・訓練を受けたダイバーが地域社会の一員として活動している点です。

持続可能な水中活動の推進

CMASは「持続可能なダイビング」の概念を早くから提唱しており、エコダイビングガイドラインの策定や、環境負荷の少ない潜水スタイルの普及に力を入れています。これにより、ダイバー1人ひとりが環境保護の担い手として意識を持つようになり、海と人間の関係性をより健全にする文化づくりが進められています。

このように、CMASは教育・スポーツ・科学・環境のすべてを統合した存在として、水中世界の未来をリードし続けています。

まとめ

CMAS(世界水中連盟)は、1959年に設立された水中活動の国際的な統括組織であり、世界中のダイビング愛好家やインストラクターにとって信頼の証とも言える存在です。単にダイビングのライセンスを発行するだけでなく、教育、競技、水中科学、環境保護といった分野にまで影響力を持つ点が特徴です。

特に注目すべきは、その国際的に標準化された教育プログラムと、海洋環境保全への積極的な関与です。競技面ではアンダーウォータースポーツの普及にも貢献しており、スポーツとしてのダイビングの可能性も広げています。

日本でもCMASは確かな存在感を持ち、国内でのライセンス発行や講習機関との連携を通して多くのダイバーを育てています。この記事を通じて、CMASの多面的な活動や価値が伝われば幸いです。

今後、海と向き合う活動や安全な水中レジャーに関心を持つ全ての方にとって、CMASという存在をより深く知ることが、大きな指針となることでしょう。