「憧れの沖縄移住、でも生活は大丈夫?」
「旅行に行きたいけれど、普段使っているあのお店はあるの?」
青い海と空が広がる沖縄ですが、本土では「当たり前」にあるものが、実は存在しないというケースが多々あります。これを知らずに訪れると、思わぬ不便を感じたり、生活コストの高さに驚愕したりすることになりかねません。しかし、ないものがあるからこそ、沖縄独自の豊かな文化や代替サービスが発展しているのも事実です。
この記事では、沖縄の「ないもの」事情を徹底的に深掘りし、その対策や代わりとなる魅力的な選択肢をご提案します。
| カテゴリー | 沖縄にないもの(代表例) | 備考・代替案 |
|---|---|---|
| 交通・インフラ | JR等の鉄道・都市ガス | モノレールのみ/プロパン主流 |
| 飲食チェーン | サイゼリヤ・餃子の王将 | 地元ステーキ店・大阪王将 |
| 生活・環境 | スギ花粉・軟水(水道) | 花粉症には天国/水は硬水 |
| 自然・気候 | 紅葉・天然の雪 | 常緑樹が中心/冬も温暖 |
沖縄のインフラ・環境に「ないもの」5選
まずは生活の基盤となるインフラや、自然環境における決定的な違いを見ていきましょう。これらは日々の生活費や健康に直結する要素であるため、移住を検討している方は特に注意が必要です。
1. JRや私鉄などの「普通の電車」
沖縄本島には、本土のようなJRや私鉄の鉄道網が存在しません。あるのは那覇空港から浦添市までを結ぶモノレール「ゆいレール」のみです。かつて戦前には「軽便鉄道」という鉄道が走っていましたが、沖縄戦で破壊され、戦後の米国統治下で道路整備が優先されたため、鉄道が復興することはありませんでした。
そのため、沖縄は完全なる「車社会」です。通勤や通学の足は自家用車かバスに限られます。朝夕の国道58号線や330号線の渋滞は慢性化しており、数キロ進むのに数十分かかることも珍しくありません。観光で訪れる際も、那覇市内以外へ行くならレンタカーは必須アイテムです。ただし、近年はバスレーン規制が厳しく実施されているため、運転時には時間帯による交通規制に十分な注意が必要です。
2. 広範囲に普及した「都市ガス」
沖縄の賃貸物件を探す際に驚くのが、ほとんどの物件が「プロパンガス(LPガス)」であるという点です。本土の大都市圏で一般的な都市ガスは、那覇市などのごく一部の地域でしか供給されていません。これは、沖縄本島の地形やインフラ整備の歴史的背景により、ガス導管を全域に張り巡らせることが困難だったためです。
プロパンガスは都市ガスに比べて基本料金や従量料金が高額になりがちです。特に一人暮らしの移住者が、本土と同じ感覚で毎日お湯を張って入浴したり、長時間のシャワーを浴びたりすると、ガス代の請求額が1万円を超えて驚愕するケースも少なくありません。オール電化物件の人気が高いのは、こうしたガス事情も大きく影響しています。
3. スギ・ヒノキの「花粉」
これは「ない」ことが最大のメリットとなる要素ですが、沖縄にはスギやヒノキがほとんど自生していません。戦後の植林計画において、亜熱帯気候の沖縄にはこれらの針葉樹ではなく、リュウキュウマツなどが選ばれたためです。
そのため、本土で多くの人々を苦しめる春の花粉症が、沖縄には基本的に存在しません。重度の花粉症患者が、花粉の飛散時期に合わせて沖縄に長期滞在する「避粉地ツアー」や「避粉移住」も人気です。ただし、サトウキビの花粉やリュウキュウマツの花粉に反応するケースもごく稀にありますが、スギ花粉によるアレルギー症状からは劇的に解放されるでしょう。マスクなしで春の空気を吸い込めるのは、沖縄ならではの特権です。
4. 水道水の「軟水」
日本の水道水は一般的に「軟水」ですが、沖縄の水道水は「硬水」に近い性質を持っています。これは沖縄の土壌がサンゴ礁由来の石灰岩(琉球石灰岩)で形成されており、カルシウムやマグネシウムが多く溶け出しているためです。
硬水であることのデメリットとして、シャンプーや石鹸が泡立ちにくい、髪がギシギシと痛みやすくなる、お風呂場やポットに白いカルキ汚れ(スケール)がこびりつきやすいといった点が挙げられます。移住直後は髪質の変化に悩む女性も多いため、硬水対応のシャンプーを使ったり、シャワーヘッドを浄水機能付きのものに交換したりするなどの対策が一般的です。一方で、ミネラル分が豊富であるという健康面でのメリットもあります。
5. 四季折々の「紅葉」と「天然の雪」
沖縄には「冬」らしい冬がありません。年間平均気温が高く、真冬でも10度を下回ることは稀です。そのため、本土のように山々が赤や黄色に染まる「紅葉」を見ることはできません。街路樹や山の木々は一年中緑色をしており、季節の移ろいを感じにくい環境です。
同様に、天然の雪が降ることもまずありません。過去に観測史上、雪(みぞれ)が降った記録は数えるほどしかなく、もし降れば県内全域で大ニュースとなり、学校の授業が中断して外を見るほどの大騒ぎになります。スタッドレスタイヤやチェーン規制といった概念も存在せず、冬でも軽装で過ごせるのは快適ですが、雪景色や紅葉狩りといった日本の風物詩が恋しくなる瞬間もあるかもしれません。
沖縄に進出していない「有名チェーン店」
2024年から2025年にかけて、コストコやロピアなど大型店の進出が相次ぎましたが、それでも頑なに沖縄へ出店していない、あるいは撤退してしまった有名チェーンが存在します。
1. ファミレスの王様「サイゼリヤ」
沖縄県民や移住者が最も「来てほしい」と切望しているのが、イタリアンファミリーレストランの「サイゼリヤ」です。低価格で美味しいワインやドリアを楽しめるサイゼリヤは、現時点では沖縄に1店舗もありません。物流コストの問題や、沖縄独自の強力な競合店の存在が理由と噂されています。
しかし、沖縄には代わりとなる魅力的な選択肢があります。「ステーキハウス88」や「ジャッキーステーキハウス」などの手頃なステーキ店や、アメリカンな雰囲気の「A&W」など、独自の食文化が根付いています。サイゼリヤがない嘆きは、地元の食堂やステーキハウス開拓の楽しみに変えていきましょう。
2. 餃子の王将(京都)
ここで注意が必要なのが、「大阪王将」は沖縄県内に多数店舗があり、非常に親しまれているという点です。しかし、「京都」を発祥とする「餃子の王将」(通称:京都王将)は沖縄に存在しません。看板のデザインが似ているため混同されがちですが、メニューや味付けには独自の違いがあります。
京都王将ファンにとっては寂しい状況ですが、沖縄の大阪王将は地域限定メニューを展開していることもあり、独自の進化を遂げています。また、沖縄には台湾料理店や地元の中華食堂も多く、安くてボリューム満点の中華料理には事欠きません。
3. 本土系の「立ち食いそば・天丼」チェーン
「富士そば」や「てんや」といった、関東圏でおなじみの立ち食いそばや天丼チェーンも沖縄にはほとんど見当たりません。これは、沖縄において「そば」と言えば小麦粉で作られた「沖縄そば」が絶対的な王者として君臨しているためです。
沖縄そばは、鰹出汁や豚骨出汁の濃厚なスープと、三枚肉やソーキのトッピングが特徴で、県内には数え切れないほどの専門店があります。日本蕎麦を提供する店も存在しますが、日常的なファストフードとしての地位は完全に沖縄そばが占めています。1杯数百円で食べられる美味しい沖縄そばがあれば、立ち食いそばの需要は低いのかもしれません。
沖縄の買い物事情に「ないもの」
ショッピング環境も本土とは少し異なります。特に大型家具や特定のブランドについては、送料の壁が立ちはだかります。
1. 家具の巨人「IKEA」
オシャレで安価な家具が手に入る「IKEA」ですが、沖縄には店舗がありません。IKEAの商品は梱包サイズが大きく重量もあるため、オンラインストアで購入して沖縄へ配送しようとすると、商品代金よりも高い送料(数万円単位)がかかるケースが多々あります。
最近では商品受け取りセンターの設置などが検討されていますが、店舗を歩き回ってホットドッグを食べるあの体験はまだお預けです。沖縄では「ニトリ」が圧倒的なシェアを誇っており、県内各地に大型店舗を展開しています。また、米軍払い下げの家具店(ファニチャーストア)巡りも、沖縄ならではのインテリア探しの楽しみ方です。
2. 百貨店・デパートの選択肢
かつては沖縄三越や山形屋といったデパートがありましたが、現在は閉店しています。現在、沖縄県内で唯一の百貨店として営業しているのは、那覇市のパレットくもじ内にある「デパートリウボウ」のみです。
本土のように、高島屋、伊勢丹、大丸といった複数のデパートを巡って買い物を楽しむということはできません。贈答品や高級ブランド品の購入先はリウボウ一択、または免税店の「Tギャラリア沖縄」となります。普段の買い物は、サンエーやイオンなどの大型ショッピングモール(モール型店舗)がメインとなり、ここで衣食住のほとんどが完結します。
3. 地下街(大規模なもの)
東京や大阪のような、駅と直結した広大な地下街や地下道ネットワークは沖縄にはありません。ゆいレールの駅はすべて高架上にあり、地下鉄が走っていないため、地下空間を発達させる必要がなかったのです。
また、沖縄は車社会であり、駐車場から店舗へ直接アクセスするスタイルが基本です。台風が多い地域性もあり、地下の浸水リスクを避けるという意味合いもあるかもしれません。雨の日は、巨大な屋根付き駐車場を完備したイオンモール沖縄ライカムやサンエー浦添西海岸パルコシティなどが、ウォーキングコース代わりとしても利用されています。
沖縄の住居・生活習慣に「ないもの」
家の中や日々の習慣にも、本土とは異なる「沖縄ルール」が存在します。これを知っておくと、カルチャーショックを和らげることができます。
1. バスタブ(浴槽)のある生活
沖縄の古い賃貸アパートや団地では、浴槽がなく「シャワーのみ」という物件が珍しくありません。温暖な気候のため、湯船に浸かって温まるという習慣があまり定着しておらず、シャワーで汗を流せれば十分と考える人が多いためです。
もちろん、近年の新築マンションやファミリー向け物件ではバスタブ付きが標準になりつつありますが、一人暮らし向けの安価な物件を探す際は要注意です。「お風呂は命の洗濯」と考える方は、物件選びの条件として必ず「バス・トイレ別(浴槽あり)」をチェックしましょう。ちなみに、銭湯も本土に比べると極端に数が少ないです。
2. 厳密な「時間感覚」
よく言われる「ウチナータイム」は、ある程度実在します。飲み会の開始時間に全員が揃っていないのは日常茶飯事で、30分〜1時間の遅れは許容範囲とされることが多いです。ビジネスの場ではさすがに守られますが、プライベートな集まりや地域の行事では、ゆったりとした時間が流れています。
また、バスの時刻表もあくまで目安です。渋滞が激しいため、予定時刻通りに来ないことは当たり前と考えた方がストレスが溜まりません。「ない」のは時間への厳格さですが、その代わりに「なんくるないさ(なんとかなるさ)」という寛容な精神がそこにはあります。
3. 炬燵(こたつ)の使用頻度
冬の風物詩である「こたつ」ですが、沖縄の家庭で見かけることは稀です。冬でも気温が15度前後ある日が多く、こたつを出すほど冷え込む期間が極端に短いためです。また、押し入れの湿気対策が大変な沖縄において、大きなこたつ布団を保管しておくスペースや手間も敬遠される理由の一つです。
暖房器具としては、エアコンの暖房機能やハロゲンヒーター、あるいは除湿機(湿度が低くなると体感温度が下がるため)が活躍します。こたつでミカンを食べる冬も素敵ですが、Tシャツに薄手のパーカーで過ごせる沖縄の冬もまた快適なものです。
沖縄の自然・生き物に「ないもの」
最後に、自然界の意外な欠席者たちを紹介します。苦手な人には朗報かもしれません。
1. 本土でおなじみの「黒いゴキブリ」
少しショッキングな話かもしれませんが、沖縄には本土で見かける「チャバネゴキブリ」や「クロゴキブリ」とは異なる種類のゴキブリが生息しています。沖縄のゴキブリ(ワモンゴキブリなど)は、サイズが非常に大きく、動きも活発ですが、本土の黒いゴキブリに比べると色が茶色く、屋外の森林や草むらに生息していることが多いです。
「家の中に出る黒い悪魔」の恐怖は少し種類が違いますが、サイズ感には驚かされるかもしれません。しかし、自然が豊かであるがゆえに、ヤモリ(家守)が家の中に侵入して害虫を食べてくれるという、頼もしい共生関係も「ある」のが沖縄です。
2. 天然の温泉(火山性)
沖縄は火山帯に位置していないため、草津や別府のような「火山性の硫黄の香りがする温泉」はほとんどありません。県内にあるリゾートホテルの温泉やスーパー銭湯の多くは、地下深くから汲み上げた「化石海水」などを沸かしたものが主流です。
お湯は塩分を含んでいることが多く、保温効果は高いですが、硫黄泉特有の濁り湯や強烈な匂いを求める温泉マニアには少し物足りないかもしれません。その代わり、オーシャンビューの露天風呂や、水着で楽しめる温泉プールなど、リゾートならではの楽しみ方が充実しています。
3. 静寂な夏の朝
沖縄の夏に「静けさ」はありません。セミの鳴き声が強烈だからです。本土では夏の終わりを告げるヒグラシなどの情緒ある鳴き声が好まれますが、沖縄ではクマゼミなどの大型のセミが、梅雨明けの6月下旬から大合唱を始めます。
その音量は「工事現場の騒音並み」とも言われ、朝のニュース番組の音が聞こえないほどです。しかし、この圧倒的な生命力の音こそが、沖縄の夏を象徴するBGMでもあります。静寂はありませんが、生命エネルギーに満ち溢れた朝を迎えることができます。
まとめ:ないものを知れば、沖縄はもっと楽しくなる
沖縄には、電車も、都市ガスも、サイゼリヤも、スギ花粉もありません。しかし、それらが「ない」という事実は、決してネガティブな要素だけではありません。
電車がないからこそドライブ文化が発達し、都市ガスがないからこそオール電化が進んでいます。有名チェーン店がないからこそ、個性豊かな個人店やローカルチェーンが輝き、花粉がないからこそ春を心から楽しむことができます。これから沖縄を訪れる方、あるいは生活を始める方は、「ないもの」を嘆くのではなく、「沖縄にしかないもの」を見つける冒険に出かけてみてください。
まずは、今回ご紹介した「ないものリスト」を参考に、現地での移動手段や滞在先の設備(特にガスとお風呂!)をしっかりチェックすることから始めましょう。準備さえ整えば、不便さも笑い飛ばせる最高の沖縄ライフが待っています。

