青い海と白い砂浜が広がる南国リゾート、沖縄。しかし、その美しい風景の中に、フェンスで囲まれた広大な米軍基地が存在することもまた事実です。「観光中に基地を見学することはできる?」「ダイビングで入ってはいけない海域はあるの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
沖縄県内には30以上の米軍専用施設があり、本島の面積の約15%を占めています。これらは安全保障の拠点である一方、特定日にはゲートが開放され、アメリカの文化を肌で感じられるフェスティバル会場としても親しまれています。一方で、海でのレジャーにおいては訓練水域への誤侵入を防ぐ正しい知識が不可欠です。
この記事では、主要な米軍基地の役割や所在地、観光客が知っておくべき立ち入りルールについて詳しく解説します。歴史的背景や返還跡地の再開発スポットも含め、沖縄の「光と影」両面を理解することで、より深く充実した旅になるはずです。
| 基地名 | 主な役割 | 所在地 | 観光・見学可否 |
|---|---|---|---|
| 嘉手納基地 | 極東最大の空軍拠点 | 嘉手納町他 | 道の駅かでなから可 |
| 普天間飛行場 | 海兵隊航空基地 | 宜野湾市 | 嘉数高台公園から可 |
| キャンプ・ハンセン | 海兵隊実弾演習場 | 金武町他 | フェス時のみ開放 |
| トリイステーション | 陸軍特殊部隊拠点 | 読谷村 | ビーチ開放イベント有 |
沖縄の米軍基地一覧とマップ|主要施設の役割と所在地
沖縄本島には、北部から南部にかけて多くの米軍施設が点在しています。それぞれの基地は陸軍、海軍、空軍、海兵隊のいずれかが管理しており、役割も大きく異なります。ここでは、観光客や県民の生活にも関わりの深い主要な5つの基地について解説します。
極東最大の空軍拠点「嘉手納基地(Kadena Air Base)」
嘉手納基地は、沖縄市、嘉手納町、北谷町にまたがる極東最大のアメリカ空軍基地です。3,700メートル級の滑走路を2本有し、戦闘機や空中給油機など多種多様な軍用機が常駐しています。その広さは羽田空港の約2倍に及び、基地内には住宅や学校、映画館まで完備された一つの「街」が形成されています。
観光客にとって最も身近な見学スポットは、滑走路を一望できる「道の駅かでな」の展望場です。ここからは離着陸する戦闘機の轟音や迫力を間近で体感でき、基地の広大さを実感できます。また、基地周辺にはアメリカンな雰囲気の飲食店や雑貨店が多く、異国情緒を楽しむことができます。
世界一危険と呼ばれる「普天間飛行場(MCAS Futenma)」
宜野湾市の市街地中心部に位置する普天間飛行場は、アメリカ海兵隊の航空基地です。住宅や学校が密集する地域に隣接していることから「世界一危険な基地」とも呼ばれ、長年にわたり返還や移設が議論されています。オスプレイなどの垂直離着陸機が配備されており、ヘリコプター部隊の拠点となっています。
基地の全貌を見るには、宜野湾市にある「嘉数高台公園(かかずたかだいこうえん)」が最適です。展望台からは滑走路と、そのすぐそばに広がる住宅街のコントラストを鮮明に見ることができます。沖縄の基地問題を考える上で、一度は訪れておきたい重要な場所と言えるでしょう。
海兵隊の実弾演習場「キャンプ・ハンセン(Camp Hansen)」
金武町、宜野座村、恩納村、名護市にまたがるキャンプ・ハンセンは、海兵隊の訓練施設です。敷地内には実弾射撃場や市街地戦闘訓練施設があり、厳しい訓練が行われています。基地の正門前には「金武アクティブパーク」周辺に広がる歓楽街「新開地」があり、タコライス発祥の地としても有名です。
普段は一般人の立ち入りが厳しく制限されていますが、定期的に開催される「キャンプ・ハンセン・フェスティバル」ではゲートが開放されます。基地内ではライブイベントやフードコートが楽しめ、多くのアメリカ兵や地元住民、観光客で賑わいます。入り口での身分証チェックは必須です。
美しいビーチを持つ「トリイステーション(Torii Station)」
読谷村の西海岸に位置するトリイステーションは、アメリカ陸軍の通信施設であり、特殊部隊グリーンベレーの拠点としても知られています。基地の名称は、入り口にある大きな鳥居のオブジェに由来しています。他の基地と比べて比較的のどかな雰囲気が漂う場所でもあります。
施設内にある「トリイビーチ」は非常に美しく、米軍関係者の保養地として利用されています。一般開放される「トリイビーチ・フェスティバル」などのイベント時には、日本人観光客もこのプライベートビーチに入ることが可能です。音楽やBBQを楽しみながら、アメリカのビーチリゾート気分を味わえます。
艦船が寄港する海軍施設「ホワイトビーチ(White Beach)」
うるま市勝連半島の先端に位置するホワイトビーチ地区は、アメリカ海軍の港湾施設です。原子力潜水艦や強襲揚陸艦などが寄港・補給を行う重要な拠点です。長い桟橋が特徴的で、海中道路や周辺の島々からもその姿を確認することができます。
通常は立ち入り禁止ですが、うるま市で開催されるハーリー大会(爬竜船競漕)や特定のお祭りイベントの際には一部開放されることがあります。海に面した施設であるため、周辺海域は制限水域となっており、ボートやダイビング船が近づく際には厳格なルールを守る必要があります。
観光客も入れる?基地内の一般公開イベントとフェスティバル
普段は高いフェンスで閉ざされている米軍基地ですが、週末や特定の祝日には一般の人々を招き入れるオープンゲートイベントが開催されます。パスポートなどの身分証さえあれば、日本にいながらアメリカ旅行気分を味わえる絶好のチャンスです。
基地内フェスティバルと「フライトライン・フェア」
各基地では年に数回、大規模なフェスティバルが開催されます。特に人気なのが嘉手納基地の「アメリカフェスト」や、各海兵隊キャンプで行われるフェスティバルです。広大な滑走路や広場に戦闘機や特殊車両が展示され、コックピットの見学や記念撮影ができることもあります。
会場ではアメリカンサイズのステーキ、ピザ、ハンバーガーなどの屋台が並び、本場の味をリーズナブルに楽しめます。また、メインステージでは有名アーティストによるライブコンサートや花火大会が行われることもあり、沖縄の夜を熱く盛り上げます。日程は在日米海兵隊や空軍の公式サイト、SNSで発表されます。
週末限定のフリーマーケットでお宝探し
キャンプ・フォスター(北谷町・北中城村)やキャンプ・コートニー(うるま市)などでは、週末の早朝にフリーマーケットが開催されることがあります。基地内に住む米軍属の家族が出店し、子供服、おもちゃ、家庭用品、古着などが格安で販売されています。
ここでの買い物は基本的に米ドルが使われますが、日本円を受け取ってくれる出店者もいます。英語での値切り交渉もフリーマーケットの醍醐味の一つです。ただし、開催可否は天候や基地の事情により直前に変更されることがあるため、出発前に必ず専用のテレホンサービスなどで確認することをおすすめします。
入場時の注意点と必須の身分証明書
基地イベントに参加する際、最も重要なのが「写真付き身分証明書」の持参です。セキュリティレベル(警戒態勢)により変動しますが、基本的には運転免許証、パスポート、マイナンバーカードのいずれかが必要です。特に運転免許証の場合は、本籍地記載が確認できる書類(暗証番号や住民票)を追加で求められるケースがあります。
また、日本国籍またはアメリカ国籍以外の方は入場が制限される場合があるため、事前の確認が不可欠です。手荷物検査も空港並みに厳しく行われ、アルコール類、クーラーボックス、ペット、ドローンなどの持ち込みは禁止されています。ルールを守ってスムーズに入場しましょう。
沖縄の海と基地|ダイビングやビーチ利用における注意点
沖縄の魅力である「海」と「ダイビング」ですが、これらも米軍基地と無関係ではありません。海域には訓練のための制限区域が設定されており、知らずに近づくとトラブルになる可能性があります。マリンレジャーを楽しむ上で知っておくべき海のルールを解説します。
立ち入り禁止の「制限水域(Restricted Waters)」
沖縄周辺の海域には、米軍が管理する訓練水域が27箇所、空域が20箇所設定されています。これらは「制限水域」と呼ばれ、射撃訓練や水陸両用訓練が行われている期間中は、漁船やダイビングボートを含め、一般船舶の立ち入りが禁止または制限されます。
特にキャンプ・ハンセン沖やキャンプ・シュワブ周辺、鳥島射爆撃場周辺などは実弾射撃訓練が行われることがあり、非常に危険です。ダイビングショップのボートキャプテンはこれらの情報を常に把握していますが、個人でボートやジェットスキーをレンタルして海に出る場合は、最新の「水路通報」や海図を確認し、絶対に制限区域に入らないよう注意してください。
ホワイトビーチ周辺と潜水禁止エリア
うるま市のホワイトビーチ周辺水域は、米海軍艦船の航行や停泊に使用されるため、特に厳重な管理下にあります。艦船の周囲一定距離(通常は100メートル以上など)への接近は固く禁じられており、テロ対策の観点からも監視が強化されています。
また、基地施設の保安のため、沿岸部でのシュノーケリングやダイビングが禁止されているエリアも存在します。意図せず基地の敷地(ビーチ)に上陸してしまうと、不法侵入として拘束されるリスクもあります。シーカヤックやSUPを楽しむ際も、フェンスやブイで示された境界線を越えないよう、位置関係を常に把握しておく必要があります。
水陸両用訓練とビーチの利用制限
沖縄の西海岸や東海岸の一部では、海兵隊による水陸両用車(AAV7など)を使った上陸訓練が行われることがあります。訓練実施時には、海域だけでなく隣接する砂浜も一時的に立ち入りが制限される場合があります。金武町のブルービーチ訓練場などが代表的です。
これらの訓練は事前に地元漁協などに通告されますが、一般の観光客には情報が届きにくいことがあります。もしビーチで「Keep Out」や「訓練中」の看板、または赤旗を見かけた場合は、速やかにその場を離れてください。米軍の警備担当者の指示には絶対に従いましょう。
基地返還と跡地利用|新しく生まれ変わった観光スポット
かつて米軍基地だった場所が返還され、大規模な再開発によって人気の観光スポットへと生まれ変わった事例も数多くあります。現在、私たちがショッピングやグルメを楽しんでいるその場所も、かつてはフェンスの向こう側だったかもしれません。
大成功事例「美浜アメリカンビレッジ(北谷町)」
今や沖縄観光の定番スポットとなった北谷町の「美浜アメリカンビレッジ」は、元々「ハンビー飛行場」という米軍施設の一部でした。1981年に返還された後、海岸沿いの立地を活かしたタウンリゾートとして開発が進められ、現在の華やかな姿になりました。
カラフルな建物が並び、ショッピング、グルメ、映画館、ホテルが集積するこのエリアは、年間を通して多くの観光客で賑わっています。かつての滑走路跡地を利用しているため敷地が広大で、サンセットビーチでの夕日鑑賞や、夜景の美しさも魅力の一つです。基地跡地利用の最も成功したモデルケースと言われています。
アジア最大級のリゾートモール「イオンモール沖縄ライカム」
北中城村にある「イオンモール沖縄ライカム」は、かつて米軍将校向けのゴルフ場「泡瀬ゴルフ場」だった場所に建設されました。2015年に開業し、その敷地面積は東京ドーム約3.5個分という圧倒的なスケールを誇ります。「ライカム(Rycom)」という名称は、かつてこの地にあった琉球米軍司令部(Ryukyu Command)の通称に由来しています。
モール内には巨大な水槽やシーサーのオブジェがあり、リゾート感満載の造りになっています。返還によって広大な土地が確保できたからこそ実現した施設であり、地元客だけでなく、海外からの観光客も多く訪れるショッピングの拠点となっています。
那覇の新都心「おもろまち」と今後の展望
那覇市の「おもろまち(那覇新都心)」エリアも、かつては「牧港住宅地区」という米軍家族の居住地でした。1987年に全面返還され、区画整理事業によって大型ショッピングセンター、美術館、博物館、高層マンションが立ち並ぶ近代的な都市へと変貌を遂げました。
さらに現在も、キャンプ・キンザー(浦添市)や普天間飛行場など、大規模な返還計画が進行中です。特に西海岸エリアでは道路の整備が進み、アクセスが飛躍的に向上しています。今後も基地返還が進むにつれて、沖縄の地図は大きく塗り替えられ、新しい観光名所が誕生していくことでしょう。
基地問題の基礎知識|歴史的背景と現状を正しく理解する
沖縄観光を楽しむ一方で、基地問題の基礎知識を持っておくことは、この島をより深く理解するために重要です。ニュースでよく耳にする数字や言葉の意味を知ることで、沖縄が抱える複雑な事情が見えてきます。
沖縄に集中する「70.3%」の意味
「沖縄には全国の米軍専用施設の約70.3%が集中している」という言葉を聞いたことがあるかもしれません。これは、日本本土にある米軍専用施設の面積と沖縄県にある面積を比較した数値です。沖縄県の面積は日本全体の約0.6%に過ぎないにもかかわらず、これほど高い割合で基地が存在しています。
この不均衡な状況は、第二次世界大戦後のアメリカ統治時代や、その後の国際情勢、日米安全保障条約などの歴史的経緯が複雑に絡み合っています。基地があることによる経済効果(軍用地料や雇用)がある一方で、騒音問題、環境汚染、事件・事故のリスクといった過重な負担が県民生活に影響を与え続けています。
「Yナンバー」と米軍属の運転事情
沖縄の道路を走っていると、ナンバープレートのひらがな部分が「Y」や「E」、「A」になっている車をよく見かけます。これは、日本国内に駐留する米軍人、軍属、およびその家族が私有する車両に付けられる特別なナンバーです。「Y」は「Yokohama」に由来すると言われていますが、現在は課税上の区分などで使われています。
Yナンバー車との交通事故が発生した場合、日本の警察だけでなく米軍憲兵隊(MP)も介入し、処理手続きが複雑になることがあります。レンタカーで運転する際は、車間距離を十分に空け、安全運転を心がけることが大切です。彼らもまた、沖縄の交通社会の一部として生活しています。
騒音問題と基地周辺の生活環境
嘉手納基地や普天間飛行場の周辺地域では、戦闘機の離着陸に伴う爆音が日常生活に影響を及ぼしています。会話が中断されたり、学校の授業が一時停止したりすることも珍しくありません。早朝や深夜の飛行訓練が行われることもあり、住民にとっては深刻な悩みとなっています。
観光客として滞在するホテルが基地に近い場合、突然の轟音に驚くことがあるかもしれません。しかし、それは沖縄の日常の一部です。その音を聞いて何を感じるか、平和についてどう考えるか。現地でしか感じられないリアルな体験として、記憶に留めておくことも旅の意義の一つと言えるでしょう。
まとめ
沖縄の米軍基地は、観光客にとって「異国情緒を感じられるイベント会場」であると同時に、沖縄の歴史や現状を映し出す鏡でもあります。フェスティバルでアメリカの文化を楽しんだり、道の駅かでなから基地の広大さを実感したりすることは、沖縄という土地を多角的に理解する良い機会となります。
最後に、基地関連スポットを訪れる際のネクストアクションをまとめました。
- イベント日程をチェック: 旅行前に在日米海兵隊などの公式SNSを確認し、フェスティバルの開催日を調べる。
- 身分証を準備: 基地内イベントに参加する場合は、パスポートや運転免許証(本籍記載あり)を必ず持参する。
- ルールを守る: 海でのレジャーや基地周辺でのドローン飛行など、禁止事項を厳守し、トラブルを未然に防ぐ。
- 歴史を知る: 嘉数高台公園や資料館に足を運び、基地問題の背景にある歴史について少しだけ学んでみる。
青い海と空の下にある「もう一つの沖縄」を知ることで、あなたの旅はより深く、忘れられないものになるはずです。ルールとマナーを守って、安全で充実した沖縄旅行を楽しんでください。

