ダイビングハンドサインの基本から緊急時まで完全ガイド!今日から出来る水中会話術

Scuba diving hand signs ダイビングの知識
「ダイビングハンドサイン」は、水中での安全と快適さを左右する“言語”です。

OK・上昇・下降・停止といった基礎はもちろん、残圧や時間、器材トラブル、危険生物の注意喚起、撮影時の順番管理まで、合図が明確であるほどダイブ全体の質が上がります。本記事はCカード講習の復習だけでなく、現場で迷いがちな「二桁の数字の伝え方」「似た形の誤認」「低視界やナイトでの見せ方」までを、プロの運用手順に沿って体系化。

さらに、海外遠征でのローカルバリエーションや、強流・濁り・暗所での視認性向上ハックも整理し、今日から実践できる“運用テンプレ”を用意しました。バディやチームの共通ルールを出発前に一枚のチェックリストで共有し、目線確保→距離1〜2m→暗背景→合図→応答確認の流れをルーチン化すれば、誤認・伝達漏れ・無駄な浮上を強力に減らせます。この記事を開いた今が、あなたの水中会話力を底上げするいちばんの好機です。

  1. ダイビングの基本ハンドサイン
    1. OK(Are you OK?/I’m OK)
    2. 問題あり(トラブル)
    3. 上昇(サムズアップ)/下降(サムズダウン)
    4. 停止・待って(Stop/Hold)
    5. 基本サインの“伝達品質”を上げる装飾
    6. ありがちな混同と修正表
    7. ミニチェックリスト(基本)
  2. トラブル・緊急時のハンドサイン
    1. 空気が少ない/空気切れ(Low on Air/Out of Air)
    2. オクトパス要求/提供の正しい連鎖
    3. 器材トラブル(マスク・レギュ・BCD)
    4. 行方不明・救助要請・緊急浮上
    5. 緊急度別・運用早見表
    6. ミニチェックリスト(緊急)
  3. 移動・隊列・方向のハンドサイン
    1. 集合・こっちに来て(Rally)
    2. 隊列・間隔(Close/Spread)
    3. 進路変更・ターン/戻る(Turn/Return)
    4. 速度調整・停止・再開
    5. 隊列運用・誤認防止表
    6. ミニチェックリスト(移動)
  4. 数字と残圧・時間の伝え方
    1. 0〜9の基本サイン(一般的例)
    2. 二桁・三桁のテンプレと残圧/時間
    3. 実用“会話文”テンプレ
    4. 数字伝達の品質を底上げするハック
    5. ミニチェックリスト(数字)
  5. 体調・耳・安全管理のサイン
    1. 寒い・疲れ・気分不良
    2. 耳が痛い・耳抜き合図
    3. 安全停止・浮力・ガス管理
    4. 環境別・見せ方ガイド
    5. 耳抜き不良・対応フロー(簡易)
    6. ミニチェックリスト(安全)
  6. 海洋生物・撮影時に役立つサイン
    1. 代表生物のサイン例
    2. 危険生物の注意喚起
    3. 撮影時のマナー・順番管理
    4. 観察・撮影“現場テンプレ”
    5. ミニチェックリスト(生物・撮影)
  7. まとめ

ダイビングの基本ハンドサイン

ダイビングハンドサインは、水中で最小の動きで最大の意味を伝えるための体系化された“肢体言語”です。OK・問題あり・上昇/下降・停止などのコアは世界的に広く共有されていますが、実際の現場では「見せる環境(距離・角度・背景・光量)」と「応答の確認」まで含めて運用しないと誤認が起きます。

本節では、基本サインの正しい形に加え、視認性を高める工夫(胸元の暗背景づくり、ライトの固定、手の速度の最適化)、似た形の混同回避、チーム合意の取り方までを実務ベースで解説します。

OK(Are you OK?/I’m OK)

  • 形:親指と人差し指で輪、他の指は伸ばす。胸元〜顔の横でゆっくり大きく。
  • 質問/応答:質問は相手に向けて1回、応答は胸前で2回。復唱OKで誤認ゼロへ。
  • 見せ方:逆光や濁りでは、BCDやスレートを背にして暗背景を作るとコントラストUP。

問題あり(トラブル)

  • 形:手のひらを水平に小刻みに振る/手首をひねる。
  • 連鎖:問題→部位サイン(耳・マスク・レギュなど)→対応(停止/上昇)。
  • コツ:OKと反対の動き(水平振り)で明確化。目線を取ってから提示。

上昇(サムズアップ)/下降(サムズダウン)

  • 上昇:親指上。「終了」ではないことを示すため、必要に応じて安全停止サインを続ける。
  • 下降:親指下。急降下ではないため、準備を確認して段階的に。
  • 注意:方向指示と混同しないよう、進路は人差し指で円弧を描く別サインで。

停止・待って(Stop/Hold)

  • 形:手のひらを前に出す。強流・低視界では肩口で小さく回数を増やす。
  • 応答:相手のOK/うなずきを待つ。無ければ距離を詰めて再提示。

基本サインの“伝達品質”を上げる装飾

  • 暗背景づくり:胸前のBCD/スレートを背景に。グローブは無地色が理想。
  • ライト運用:ナイト/濁りは胸元固定照射→円描きで注意喚起→サイン→ライトで復唱。
  • スピード:ゆっくり・大きく・最大3回。速いと形が潰れて誤認の温床。

ありがちな混同と修正表

混同例 原因 修正のコツ
OKと「0」 数字と文脈が曖昧 「数字枠」で見せる宣言→数字→OKの順で固定
上昇と終了 親指の意味が二重 終了は手のひら振り+上向き親指の連鎖で区別
停止と集合 片手の向きが似る 集合は招き→地点指示→停止の3点セット

ミニチェックリスト(基本)

  • 目線確保→距離1〜2m→暗背景→サイン→応答確認の順をルーチン化
  • 似た形は文脈と連鎖で分離(例:上昇→安全停止→OK)
  • 事前に「終了/上昇の区別」「数字の枠宣言」のチーム統一

トラブル・緊急時のハンドサイン

緊急サインは即時・単純・冗長が原則です。「状態→要求→行動」を最短の連鎖で示し、相手が同じ行動に入ったことを目視確認するまでを一連のセットにします。本節では空気系(Low/Out/オクト運用)、器材系(マスク・レギュ・BCD)、行方不明/救助、緊急浮上の運用をプロトコル化。低視界や流れがある環境での“見せ方”にも触れ、実地で迷わないための連鎖テンプレを提示します。

空気が少ない/空気切れ(Low on Air/Out of Air)

  • Low:胸元で指をこすり合わせる→メーター質問→数字→進路判断。
  • Out:喉元を横に切る→オクト要求→オクト提供→着用確認→上昇準備。
  • 移動:ホールドで姿勢安定→コントロールされた上昇→水面サイン。

オクトパス要求/提供の正しい連鎖

  1. 要求者:口元を指→手のひらを相手へ(あなたの空気を)。
  2. 提供者:オクトを指→前に差し出す→OK確認→相手の装着を目視。
  3. 双方:前胸でOK→上昇サイン→ライン/ロープへ移動。

器材トラブル(マスク・レギュ・BCD)

  • マスク漏水/曇り:マスク指さし+回す動作→停止→排水→OK→再開。
  • レギュ不調:口元指し+手を振る→オクト切替→OK→進路短縮。
  • BCD異常:インフレータ指さし+上下→浮力再調整→安全停止を優先。

行方不明・救助要請・緊急浮上

  • 行方不明:手で「?」→ライト円→1分サーチ→合流不可なら浮上の合意。
  • 救助要請:片手大きく振る+方向指示+距離数字→集合→役割分担。
  • 緊急浮上:上昇→胸前で切替合図→OK不要で移動(状況次第で省略可)。

緊急度別・運用早見表

状態 サイン 次の一手
残圧低 指すり+数字 進路短縮→安全停止→早め浮上
空気切れ 喉カット→オクト要求 オクト確保→上昇→水面ヘルプ
マスク漏水 マスク指し+回転 停止→排水→OK→再開
迷子 「?」+ライト円 1分サーチ→不成立なら浮上合意

ミニチェックリスト(緊急)

  • サインは状態→要求→行動の3手で連鎖させる
  • OKの返答がなければ未伝達。距離を詰めて再提示
  • ライトは注意喚起→胸元固定→復唱の三役で使う

移動・隊列・方向のハンドサイン

移動時のサインは、集合→進路→速度→間隔→確認を一定の順番で出すと齟齬が激減します。特に透明度が落ちる日や流れのあるポイントでは、先頭と最後尾の視認性を継続的に担保する工夫が鍵。ここでは集合・ターン・戻り・速度調整・解散の各局面をテンプレ化し、「今は何を伝えているのか」が誰にも迷わない見せ方を示します。

集合・こっちに来て(Rally)

  • 片手で招く→集合地点(岩・ロープ)を指す→停止の手を添える。
  • 強流では地点を先に示すことで移動ベクトルのズレを防止。

隊列・間隔(Close/Spread)

  • 両手幅で理想間隔(1〜2m)を示す。狭すぎると衝突、広すぎると見失い。
  • 最後尾はライトを胸元固定し、自位置の常時発信を担当。

進路変更・ターン/戻る(Turn/Return)

  • 指さし→円弧→採用方向を強く指差し→OK確認。三叉路は指3本で分岐を明示。
  • 上昇と混同しないよう、親指は使わず人差し指で方向のみを示す。

速度調整・停止・再開

  • 手のひら上下=スピードUP/DOWN。撮影時はDOWN→停止→再開で段階化。
  • 停止後は指鳴らし/ライトで目線回収→全員の準備OKを確認して再開。

隊列運用・誤認防止表

指示 標準の見せ方 誤認しやすい点 改善のコツ
集合 招き→地点→停止 待機か移動か曖昧 必ず停止サインで締める
ターン 指→円弧→採用 上昇と混同 親指を使わず人差し指で描く
間隔 両手幅 距離の実感がない 数字で「1-2m」を添える

ミニチェックリスト(移動)

  • 先頭は進路→速度→間隔、最後尾はライト常時ONで状態発信
  • 各合図ごとにOK確認。OKがない=隊列崩れの兆候
  • 撮影時は停止サインを挟んでから動線復帰

数字と残圧・時間の伝え方

数字は誤認の温床です。多くの地域では「片手0〜5、両手6〜9(5+片手)」が一般的ですが、国・団体で細部が異なることもあります。重要なのはチームで事前に統一し、二桁の“間”や単位(残圧/時間)を明確化すること。本節では0〜9の基本、二桁/三桁のテンプレ、残圧・時間の“会話文”、視認性を上げるハックをまとめます。

0〜9の基本サイン(一般的例)

数字 注意点
0 OKの輪を水平に OKと混同→「数字枠」で宣言してから
1〜5 片手の指の本数 指先をライトで照らす
6〜9 両手で5+片手の本数 文化差は事前統一

二桁・三桁のテンプレと残圧/時間

  • 二桁:十の位→横に間→一の位(例:3→空間→5=35)。
  • 三桁:百→間→十→間→一。速いと潰れるためゆっくり
  • 残圧の質問:手のひらでメーターを描く→「?」→相手の数字。
  • 残圧の回答:数字→胸前OK→進路判断のサイン(継続/戻る)。
  • 時間共有:手首を指す→数字(分)→停止/ターンなどの行動を続ける。

実用“会話文”テンプレ

  • 聞く:メーター→「?」→(相手の数字)→親指で継続/戻る。
  • 伝える:数字→OK→(指で方向)→進行。
  • 時間:手首→5→停止→安全停止→OK。

数字伝達の品質を底上げするハック

  • 胸元の暗背景+ライト固定で指先を明るく
  • 二桁はを体で作る(肘を広げる・手を横へ払う)
  • 聞き手は復唱でダブルチェック(相手の数字をもう一度示す)

ミニチェックリスト(数字)

  • 「6〜9」「二桁の間」「残圧の単位」をブリーフィングで統一
  • 数字→意味(残圧/時間)→OKの順で固定
  • 復唱しない数字サインは禁止にするぐらいでちょうど良い

体調・耳・安全管理のサイン

安全は“異常の早期共有”から。寒さ・疲労・耳痛・痙攣など、恥ずかしさや遠慮よりも早出しが最優先です。本節では体調サインの標準化、耳抜き不良時の対応ループ、低体温や攣りの初動、安全停止3分の見せ方を、誰でも同じ手順で運用できるように整理します。

寒い・疲れ・気分不良

  • 寒い:腕で自分を抱く→停止→コース短縮/浮上の相談。
  • 疲れ:手のひらを上下(まあまあ)→速度DOWN→間隔を詰める。
  • 吐き気:口元を覆う→姿勢水平→落ち着いたらOK復帰。

耳が痛い・耳抜き合図

  • 耳痛:耳を指→親指下(下降停止)→浅場へ50cm戻る。
  • 耳抜きOK:耳指し→OK→降下再開前に全員のOK確認。

安全停止・浮力・ガス管理

  • 安全停止:手で板を作り「3」を示す→ロープ/ライン保持→時間共有。
  • 浮力微調整:手のひら上下で微調整合図→中性浮力練習にも活用。

環境別・見せ方ガイド

環境 課題 工夫
低視界 形が潰れる 胸元ライト固定、距離1m、回数増し
強流 手が流される 肩口で小さく、連鎖サインで冗長化
ナイト 暗く見えにくい ライト円描き→サイン→ライトで復唱

耳抜き不良・対応フロー(簡易)

  1. 耳痛サイン→即停止→浅場へ50cm戻る。
  2. 姿勢を正し、ゆっくり耳抜き→OK確認。
  3. 再下降は前より遅く。再発ならミッション短縮/中止を合意。

ミニチェックリスト(安全)

  • 「異常の早出し」を褒める文化にする
  • 停止→対処→再評価→OKのループを習慣化
  • 安全停止3分は手首→3→板の順で統一

海洋生物・撮影時に役立つサイン

生物サインは“伝える楽しさ”と“守る配慮”の両立が大切です。代表種(サメ・エイ・ウミガメ・ハタ・タツノオトシゴ・ウミウシなど)のサインに加え、距離・方向・順番を数字で明確にして、生物ストレスとダイバー同士のトラブルを同時に減らします。撮影は停止→順番→時間の三点で管理し、NGは×印で即周知します。

代表生物のサイン例

生物 サイン 注意点
サメ 頭上に手刀 群れを驚かせない、後方から穏やかに接近
エイ 手を水平に滑らせる 尾に近づかない、真後ろに入らない
ウミガメ 甲羅を丸で示す 進路を塞がない、前方横切り禁止
ハタ類 手で口を大きく示す 根の上でのホバリングは最小限に
タツノオトシゴ 曲げ指で尾を表現 呼吸で揺らさない距離で
ウミウシ 小さな円を指で描く 指差しは近づけすぎない

危険生物の注意喚起

  • 基本連鎖:生物サイン→方向指示→距離(数字)→停止。
  • 例:「オニカサゴ」→右を指→2(m)→停止→迂回。

撮影時のマナー・順番管理

  • 順番:数字で1→2→3。撮影者は短時間の数字を自ら宣言。
  • NG:指で×印。卵保護中やクリーニング中はストロボ自粛。
  • OK:小さな円→相手指さし→「30秒」などの数字を添える。

観察・撮影“現場テンプレ”

  • 発見者:生物サイン→方向→距離→停止。後続は横から合流。
  • 撮影者:停止→短時間の数字→終了でOK→隊列復帰。
  • ガイド:集合→間隔→順番→解散を毎回同じ順で。

ミニチェックリスト(生物・撮影)

  • 生物サインは位置情報(方向・距離)と常にセット
  • 撮影NGは×印で即共有、順番は数字で可視化
  • 接近は真横からゆっくり、前方横切りをしない

まとめ

ハンドサインは「形」を覚えるだけでは機能しません。伝える前に相手の視線を取り、暗背景やライトでコントラストを作り、意味→(方向や数字などの)補足→相手の了解の三拍子で完結させる――この運用設計が安全の実体です。

数字は復唱で誤認をゼロに、残圧・時間は“質問サイン→回答サイン→OK”の順で定型化。低視界・ナイト・強流ではライトの円描きや胸元固定で視認性を底上げし、撮影時は順番と時間を数字で明確化して生物への負荷を抑えます。

事前ブリーフィングでは「6〜9の形」「二桁の間」「終了と上昇の区別」「危険生物の距離と方向のセット提示」など、チームの共通ルールを一度で統一。この記事の表・チェックリスト・会話テンプレを丸ごと取り入れれば、初級者でも今日から“短く・大きく・一貫して伝える”が習慣化し、ガイドもバディも安心できる“強いチーム”に近づきます。最後のOKが返るその瞬間まで、コミュニケーションを切らさないこと――それがダイビング上達の最短ルートです。

  • 出発前に「数字・残圧・終了/上昇の区別」をチームで統一
  • 水中は「目線→距離→背景→合図→応答」の順を固定化
  • 低視界・ナイトはライト併用、強流は肩口でコンパクトに
  • 撮影は順番と時間を数字で管理、NGは×印で即周知